歯のコラム

COLUMN

むし歯はいつから存在していたの?

2023/6/15

むし歯

「歯が痛い!歯茎が痛い!」と思ったら歯科医院へ行き治療する。このようなシステムが確立したのはここ100年ほどのことです。それ以前の人々はどうしていたのでしょうか?

 

古代人もむし歯で苦しんでいた!

現在分かっている限りでのむし歯・歯周病の歴史は、約30万年前の太古の昔から始まります。遺跡等で発掘された人骨に、むし歯や歯周病の痕跡が見つかったのです。

ザンビア(アフリカ大陸南部)で発掘された約30万年前の化石人骨ではむし歯が発見されました。またユーラシア大陸を中心に生活していたネアンデルタール人の人骨からは、歯周病が発見されています。

口腔内のトラブルというのは、古代人も現代人も関係なく悩まされていたのでしょう。

そして、むし歯や歯周病の治療が未発達の古代ではどのように対処していたのかというと、ネアンデルタール人たちは歯をつついて歯周病の痛みを緩和させていたようです。

ネアンデルタール人の食事は果実や植物の葉・茎、肉類などの比較的固いもので、土や灰が付いたまま口にしていたので、食後は楊枝で食べカスを掃除する必要がありました。

遺跡内に、楊枝の跡とともに、歯周病であったとの証拠がスペインで発掘された化石に残っていたことから、スペインの研究者チームは、食後の掃除だけではなく、歯周病による痛みや炎症を緩和する目的で楊枝を使っていたという仮説を立てました。

古代の人々も歯間ブラシの必要性に気づいていたのでしょう。

 

食の進歩がむし歯を悪化させた⁉

様々な古代人の人骨で歯周病の状態を比較すると、身分の高い人ほど歯周病の病状が進行していました。

身分の高い人は食べ物に恵まれていたことから、歯周病が悪化しやすかったのでしょう。

つまり歯周病は食習慣に影響されるということです。

そしてむし歯の大きな原因となる砂糖は、食べ物の少ない古代では現代と比べると口にする機会が少ないため、むし歯の発生率自体は現代の半分以下となっていました。

日本でむし歯が劇的に広がり出したのは江戸時代以降のことです。

 

縄文人は意外とむし歯が多い!

現代人のむし歯発生率は約30%。それに比べて縄文人は約8%の発生率です。現代人と比べると少ない数字ですが、同時期アメリカで狩猟民族として生活していた人々のむし歯発生約1.5%と比べると、圧倒的なむし歯の多さです。

縄文人は肉や魚のよりも、芋や栗などの植物が中心の食生活だったと考えられています。そして芋類の主成分はデンプンです。デンプンはむし歯菌の栄養となる糖で出来ています。つまり縄文人の食スタイルが、外国民族と比較してむし歯発生率が上がる原因となったのでしょう。

そして弥生時代になると稲作文化が始まり、その結果、むし歯発生率が約17%と増加したとの調査結果が出ています。主食である米を安定して手に入れることができた代わりに、生涯むし歯トラブルに悩まされることとなりました。

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