COLUMN
2020/5/2
その他
以前のコラムで『歯』にまつわることわざについてお伝えしました。
今回もいくつかのことわざを紹介しましょう!
ごまめの歯ぎしり
力の弱い者が、いたずらに憤慨して悔しがることのたとえ
ごまめとは鰯という元々弱い魚がカラカラに干されているものです。そのごまめをよく見ると、目を見開き歯をくいしばって歯ぎしりしているようにも見えるため、弱い魚が歯ぎしりしてくやしがっている、悔しがってもどうにもならないという意味を持っています。
例文 『いくら妻にお小遣いを上げてほしいと言っても、僕の言葉はごまめの歯ぎしりでしかない』
目には目を歯には歯を
自分に危害を与えた人へ復讐や報復を与える、受けた害と同じだけの害を相手へ返すことのたとえ
このことわざの語源はいくつか諸説があります。一つは古代バビロニアの「ハンムラビ法典」にある一節で、「目を潰されたら相手の目を潰し、歯を抜かれたら相手の歯を抜く」という、犯した罪と同等の罰を与えるという意味です。ただし倍返しのような過剰な報復を行うのではなく、同等の罰にとどめてやりすぎを防ぐという目的でつくられたものです。もう一つは旧約聖書の出エジプト記21章の「命には命を、目には目を、歯には歯を、手には手を、足には足を、やけどにはやけどを、傷には傷を、打ち傷には打ち傷を」という一節です。こちらもハンムラビ法典と同様に過剰な報復を防ぐという目的を持っています。
現代では「やられたらやり返す」といった復讐のイメージが強いですが、本来は上記のように「同等の報復までしか行わない、やりすぎは禁止」という意味です。
例文 『いじわるされても「目には目を歯には歯を」で、倍返しはやめておきましょう』
歯がゆい
思い通りにならなくてイライラする、もどかしい、じれったいということのたとえ
「歯がゆい」は四字熟語の「隔靴掻痒(かっかそうよう)」という言葉に似ています。隔靴掻痒の「隔」は隔たりを、「靴」は履き物を、「掻」は引っ掻くことを、「痒」は痒いということを表しており、足が痒くて搔きたいが靴が邪魔して痒いところに手が届かないという状況を表現しています。「歯がゆい」も、歯が痒くてもどかしいという意味を持っています。
例文 『 広子は妹の話し終った時、勿論歯がゆいもの足らなさを感じた。けれども一通り打ち明けられて見ると、これ以上第二の問題には深入り出来ないのに違いなかった。彼女はそのためにやむを得ず第一の問題に縋りついた(芥川龍之介の「春」より)』
歯止めをかける
物事の行き過ぎをくい止めるということのたとえ
「歯止め」とは、車輪と車輪の接触面の間に挟んで勝手に動かないようにしておくものです。つまりブレーキの役割を持っています。「歯止めをかける」とは、事態の進行を抑え止めるということです。
例文 『憎悪の感情は、どっちか優越の意識を持っている以上、起したくも起されない。馬琴も相手の言いぐさが癪にさわりながら、妙にその相手が憎めなかった。その代りに彼自身の軽蔑を、表白してやりたいという欲望がある。それが実行に移されなかったのは、恐らく年齢が歯止めをかけたせいであろう(芥川龍之介の「戯作三昧」より)』
奥歯に剣
心の中では敵意を持っているが表面には出さないことのたとえ
相対する人には奥歯は見えません。そして剣は敵意を表しています。つまり見えない奥歯に剣を隠すということは、敵意を隠し相手と接するということです。
例文 『御殿でなくばと奥歯に剣、籏はこやつと睨し眼(「実盛物語」の第三段「源平布引滝」より)』
豆腐で歯をいためる
ありえるはずがないことのたとえ
豆腐ほど柔らかいものを食べても歯は痛くなりません。つまり現実ではありえないことを表しています。
柿は歯の毒腹薬
「歯の毒」とは、柿には糖分が多いので食べ過ぎると虫歯になるので注意しないといけないということ。「腹薬」とは、「柿が赤くなると医者が青くなる」と同様、栄養が豊富でおなかの調子を整える作用があるという意味を持っています。つまり、柿を食べ過ぎると虫歯になりやすいが、おなかにとってはいい薬となる、ということです。